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今回は前回のITコンサルティングの基本①に続く二回目です。①では業界の基礎知識をご紹介しました。今回はコンサルタントに必要なスキルとツールについてです。
ITコンサルティングのツール
ITCプロセスガイドライン
ITコーディネーターはIT活用で単なる業務の効率化だけでなく、付加価値を創造し、産業構造の改革を進めます。
ITCプロセスガイドラインは標準化されたプロセスガイドライン(PGL)は協会のホームページに無料で公開されている。全ての行動に共通して管理すべき「共通ガイドライン」とIT手順を時系列にまとめた「フェーズ別ガイドライン」の二つから構成されている。「共通ガイドライン」はプロセス&プロジェクトマネジメント・コミュニケーション・モニタリング&コントロールからなる。また、「フェーズ別ガイドライン」は5つのフェーズから構成されている。
- 経営戦略フェーズ・・SWOT分析を使い外部・内部環境を整理する
- IT戦略策定フェーズ・・中長期的な計画と短期的な計画を策定する
- IT資源調達フェーズ・・ハードウェアやソフトウェアや設備や人材を調達
- IT導入フェーズ・・「IT計画書」を元に業務プロセスを詳細化して構築
- ITサービス活用フェーズ・・費用対効果を測定し、改善や改革を行う
戦略マップ
戦略は経営者だけでなく全ての従業員が、進むべき方向性を一致させて実行しなければなりません。その為に戦略を見える化して、共有することを戦略マップと言います。
戦略を共有して実行するツールとしてBSC(Balanced Score Card)があり、財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の視点から戦略目標を立てます。達成度を定量的な指標で測定し、目標値を決めて具体的な施作を決定します。
ビジネスモデリング
ITの推進や内部統制の整備などに当たり、業務を可視化すること。
経営者が望んでいるITのイメージを明確にする時に使う表記法として有効なのがUML(Unified Modeling Language)のユースケース図です。また、業務の流れや改善点を詳細化する「BPMN(Business Process Modeling Notation)」と「DMM(Diamond Mandara Matrix)」がある。他にもデータの関連性や流れを整理する「ERD(Enity-Relationship Diagram)」と「DFD(Data Flow Diagram)」がある。
業務改善のためには、表記法を気にせず描いてみることが大切です。VisioやPowerPointを使うと効率が良い。
成熟度モデル
成熟度は、組織やIT基盤などを定量的に評価し、従業員の行動や改善事項の指針を提示します。成熟度の考え方はCMMIやCOBITなどで取り入れられている。
ベストプラクティス
成功事例のテンプレートとして使える「ベストプラクティス」を探すために3つのアプローチがある。
- リファレンスモデルを参考にする・・米国生産性品質センター(APQC)のプロセス分類フレームワーク(PCF)など
- ナレッジベースを参考にする・・コンサルティングファームなどでは独自に整備
- 独自にリサーチ
ベストプラクティスの導入は業務パッケージを導入するか独自に作り出す。
リファレンスモデル3つ
- APQCの「プロセス分類フレームワーク」(PCF:Process Classification Framework)
- CSMを推進・実行するためのSCOR(Supply Chain Operation Reference Model)
- VRM(Value Reference Model)はマイケル・E・ポーターが著書の中で論じたもので、企業における競争優位性を分析するためのフレームワークである。
ベストプラクティスはリファレンスだでなく、既存のプロセスを評価して最適するための手順もフレームワークとして提供している。
PMBOK (Project Management Body Of Knowledge)
「KKD」(勘と経験と度胸)から定量的な指標を用いた体系的なマネジメントの手法であるモダンプロジェクトマネジメントに変化している。
米国プロジェクト協会(PMI:Project Management Institute)が体系化したPMBOKには9つの知識エリアがある。スコープ・タイム・コスト・品質・人的資源・コミュニケーション・リスク・調達・統合マネジメントがあり、それぞれのエリアでマネジメントすべき内容が定義されている。国際的な認定制度PMP(Project Management Professional)という資格もあり、国内では日本語で受験できる。
ITコンサルティングのプロジェクトマネージャーは、プロジェクトの管理・顧客との折衝・予算管理の大きく3つの役割がありますが、その全てにPMBOKが活用できる。プロジェクト管理と予算管理にはPMBOKの標準技法であるEVM(Earned Value Management)法が有名です。
顧客のITプロジェクト実行支援にも役立つ
PMBOKは世界標準のマネジメント手法であるために、そこで定義されている用語や考え方は、ユーザーとベンダーの共通語として利用できます。PMBOKを活用することで不慣れなユーザーの支援を円滑にできます。
ITIL IT Infrastructure Library
各国の民間企業やセフ機関から収集されたITサービスに関するベストプラクティスが元になっている。それらをライブラリー化して提供されている。
SLCP2007 Software Life Cycle Process 2007
ソフトウェア業界の市場の透明性を高め取引のさらなる可視化を実現する「共通の物差し」として用いることを目的にしている。
SWEBOK Guide to the Software Engineering Body Of Knowledge
ソフトウェアの開発・保守の中で、実証された理論や方法論、ノウハウ、各種知識をソフトウェアエンジニアリングとして体系化したもの
品質マネジメントシステム
ここでは情報システムの品質を改善、維持することを指す。情報システムの品質特性は「信頼性」「安全性」「準拠性」「有効性」「効率性」の五つの要素から構成されている。
品質マネジメントの対象には「製品」と「プロセス」の2種類がある。レビューやテストの方法などの開発プロセスが間違っていると情報システムの品質を高めることはできません。
品質マネジメントの基本は「PDCA」サイクルであり、その中でもCHECKが特に重要である。
- PLAN:目標・計画・ルール
- DO:実施
- CHECK:結果の測定・評価・分析
- ACTION:是正措置
品質マネジメントシステムの国際標準「ISO9001」
ISO9001への適合(認証取得または維持)を経営上の重点項目にあげている企業が多く、また顧客が趣旨を理解しやすく、結果として提案事項の説得もしやすいことから、必須ツールとなっている。
SQuBOK Guide to the Software Quality Body Of Knowledge
現場にとって有効な知識の体系化を狙い、基礎知識のみではなく最先端の知見を集積しています。国内の高品質なソフトウェア組織が実践してきた取り組みを盛り込んでいる点が大きな特徴です。
セキュリティマネジメントの規格
情報セキュリティは情報漏洩を防止する「機密性」Confidenciality、情報の改善を防止し正確性を維持する「完全性」Integrity、情報システムの利用と情報へのアクセスを保証する「可用性」Availabilityの3大要素から構成されている。頭文字をとって「情報のCIA」とも言われます。
情報セキュリティの企画「ISO27001」、個人情報保護の企画「JISQ15001」、リスクマネジメントの規格「ISO31000」などがある。
ITコンサルタントに必要なスキル
ITコンサルタントとSEの大きな違い
SEは顧客のために情報システムの宝剣を定義し、設計し、構築します。一方ITコンサルタントは顧客か抱える経営課題に対してITを使った解決策を提案することです。
ITコンサルタントに必要なスキル
- 問題解決力・・企業が抱える問題を発見、整理、分析し、解決策を提示する力
- 思考ツール活用力・・思考ツールを使いこなし、論理的・現実的・具体的な提案をする力
- IT戦略立案力・・顧客の経営戦略に基づいてIT活用の方向性を組み立てる力
- コミュニケーション力・・顧客の真意を理解し、関係者の利害を調整し、良い方向に導いていく力
- プロジェクトマネジメント力・・プロジェクトを管理し、リーダーシップを発揮する力
- 業界知識・・顧客が属する業界に関する、法規制、商慣習、CSF、コア業務、システム体系などの知識
問題解決力
企業の抱える問題を発見、整理、分析し、解決策を提示する力。また①問題発見力②論理的思考力③要因分析力から構成されている。
問題発見力とは顧客が気づいていない経営課題を発見すること。経営計画や他者の指標・実績、マニュアルなどの「基準」と現状の数値や現場視察、ヒアリング、監査などの「実態」を比較・分析することで問題を発見することができる。
論理的思考力とは物事を因果関係に基づいて考える力を言います。全ての結果には原因があり、原因なし起きる結果はありません。思い込みを排除するために「仮説」と「結論」を意識的に区別することが大切です。また、論理的に勘会えるには、目的と手段を混同しないようにしなければなりません。加えて論理的思考には「数字」が欠かせません。数字に基づいていなければ結論を間違える可能性があります。
要因分析力は問題の真の要因を突き止め解決の糸口を見出す力を言います。すなわち、問題を起こしている要因を取り除くことです。要因分析の手法として、MECE(Mutually Exclusive and Collectively Ehaustive・ミッシー)やロジックツリーなどがあります。
考える力を強化するのは日常の中で物事を表面的でなく本質的に見る訓練を続けることが大切です。問題解決とは本質的には情報を整理することです。
思考ツール活用力
思考ツールが論理的な思考を強化します。
企業の内外環境を整理する「SWOT」分析は、自社を取り巻く外部環境と内部状況を整理するツールで、経営戦略の立案で活用します。社内の強み「Strength」と弱み「Weakness」、社外の機会「Opportunity」と脅威「Threat」の頭文字をとって「スウォット」と読みます。
外部の潜在的な脅威を洗い出す「5Forces」とは、企業を取り巻く競争環境を①既存競合先との競争②新規参入の脅威③代替品の脅威④買い手の交渉力⑤売り手の支配力の5つの要因で表したものです。
マーケティング活動を組み立てる「4P」はマーケティングミックスを立案する際の切り口であり、製品(Product)・価格(Price)・流通経路(Place)・販売促進(Promotion)の4つである。
顧客の購買プロセスを分析する「AISAS」は注意「Attention」・興味「Interest」・検索「Search」・購買「Action」・情報共有「Share」の5つの段階の頭文字をとったものである。従来は「AIDMA」注意「Attention」興味「Interest」要求「Desire」記憶「Memory」購買「Action」が使われていたがインターネットの普及によりAISASが使われるようになった。
企業の競争力を分析する「バリューチェーン」とは、企業が顧客価値を生み出すプロセスをモデルで表したものです。バリューチェーンを使ってビジネスプロセスの流れを整理していくことで、競争力の厳選やボトルネックが明確になり、ITで今日カセべき箇所が見えてきます。
IT戦略立案力
IT戦略とは、経営ビジョンの実現を目的とした情報システム活用の基本的な方針・方策を指します。情報システムの導入は経営ビジョンの実現にどれだけ寄与するかすなわち「投資対効果」が問題になり、そのためにもしっかりとした経営ビジョンが必要になっています。
IT経営の例
- 業務プロセスの再構築にITを活用した顧客満足や生産性の向上
- 取引・顧客情報などを利用した営業・マーケティングの改革、新製品や新サービスの開発
- ネットワークインフラ整備による社内、遠隔地、モバイル環境でのコミュニケーションの充実
- ノウハウの蓄積・共有による人材の強化、ビジネスの付加価値の向上
- 業務プロセス全体の可視化によるマネジメントの高度化
- ITの活用による新たなビジネスモデルの構築
- その他、ITの活用による企業競争力強化など
IT戦略が経営戦略との整合性が取れていないと、情報システムを導入しても、携ビジョンの実現には結びつきません。IT投資に二の足を踏む企業が多いのは、こうした苦い経験もひとつの要因になっています。
コミュニケーション力
「傾聴力」・・相手の話をしっかりと聞き適切な質問を投げかけ信頼関係を築く
「理解力」・・顧客がコミュニケーションのプロでは無いという前提に立ち、相手の言葉から真意を理解していく努力をしなければなりません。
「ファシリテーション力」・・ファシリテーションとは、会議などにおいて関係者の相互理解と合意形成を促進することです。ファシリテーションの基本は、顧客満足や経営ビジョンなど、すべての参加者が納得する「共通目的」を見つけることです。
「交渉力」・・交渉は、双方が得をするWin-Winの状態を目指すのが基本です。交渉力を身につけるには第一に交渉相手の立場を理解する努力が欠かせません。
「表現力」・・提案内容を顧客に理解させて実行を流すこと。顧客に対してのプレゼンテーションで提案内容意思決定者に伝え、決断を流さなければなりません。
プロジェクトマネジメント力
ITコンサルタントは.受け身の姿勢ではなく、顧客に対してイニシアチブをとらなければなりません。そのためには、目標に向けたロードマップの作成がプロジェクト成功の鍵である。プロジェクトマネジメント能力を高めるには、PMBOKや情報を処理技術者試験のプロジェクトマネージャーのカリキュラムを押さえておけば充分です。しかし、発注者である顧客を動かすには、自己の専門性を高め、お客様に専門家として認めてもらう必要があります。そのためには、特にコンサルティングの流れやポイントをたまに叩き込み、コミュニケーション力を身につけるコトガことが重要です。
業界知識
顧客の経営課題を理解するために、顧客の業界チシキ知識を学ぶ必要がある。日本標準産業分類を使って、顧客の境界がどの分類に相当するかを確認することで、位置づけや他の業種との区別を理解できます。また「顧客の顧客」の動向にも注意を払う。業界新聞などを利用する方法もある。
業務知識
業務知識を身につける方法
- 専門領域の書籍を読む
- 中小企業診断士などの資格取得を通じて基礎理論を学ぶ
- ERPパッケージが装備している標準機能から学ぶ
- 専門家(会計士、社労士、ベテランのコンサルタントなど)から教えてもらう
- 顧客から業務ノウハウを聞き出す
「日経情報ストラテジー」や「日経コンピュータ」などのIT業界しやインターネットのウェブサイトには、IT戦略やシステム構築の事例が数多く紹介されている。
ー感想ー
前回のコンサルティングの基本に続いてのご紹介でしたが、この本も大手コンサルティングファームへの就職希望者向けという位置付けから製作されています。しかし、各項目は丁寧に解説されており入門書としては秀逸でした。
コンサルティング・コーチングなどのお問い合わせはこちらをご覧くださいませ。
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